日本人が河童に見える@芥川龍之介
今も変わらない@青柳洋介
『河童』(かっぱ)は、芥川龍之介が1927年(昭和2年)に総合雑誌『改造』誌上に発表した小説である。
当時の日本社会、あるいは人間社会を痛烈に風刺、批判した小説であり、同じ年の芥川の自殺の動機を考える上でも重要な作品の一つであるといえる。芥川の晩年の代表作として有名で、芥川の命日7月24日が河童忌と言われるのもこのためである。
副題には「どうか Kappa と発音して下さい。」という半ば不可解な言葉が記されている。
なお、上高地の河童橋の名称は、当小説以前に存在しており、むしろ「河童」橋の名称の方が、当小説の着想に影響を与えたと思われるが、当小説の発表および芥川の自殺によって、より知名度が上がることになった。
物語は、ある精神病患者の第二十三号が誰にでも話すという話を語ったものであるとして進められる。三年前のある日、彼は穂高山に登山をしに行く。その途中で彼は河童に出会い河童を追いかけているうちに河童の国に迷い込む。そこは、すべてが人間社会と逆で、雌の河童が雄を追いかけ、出産時には、事前に河童の生活について知らされ胎児に産まれたいかどうかを問い、胎児が生まれたくないと答えれば即時に中絶が合法的になされる。資本主義者のゲエルは新機械の発明で職工が次々解雇されるが、社会問題が起きない理由として『職工屠殺法』を挙げ、ガスで安楽死させられた河童の肉を食用にすると言う。唖然とする精神病患者に、「あなたの母国でも第4階級(最貧層)の女性が売春を余儀なくさせられているのだから、食用を厭うのはセンチメンタル」と言い放ち、河童の肉で作られたサンドウィッチを差し出す。詩人のトックは自殺を果たすが、死後に交霊術により現れ、様々な質問に答え、自分の死後の名声を気にかける。中でもハインリヒ・フォン・クライストやワイニンゲルのような自殺者を友人として称賛するが、自殺はしていないがそれを擁護したモンテーニュは評価するが、厭世主義者のショーペンハウアーとは交友しないという。人間の世界に戻った主人公は河童を人間より『清潔な存在』と振り返り懐かしみ、対人恐怖が一層激化することになる。
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