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2012年10月29日月曜日

ノーベル経済学賞


マーケット・デザインは数学です。バーチャルです。想像には限りがない。

資源は有限です。環境負荷も有限です。物理学です。リアルです。創造には限りがある。

 【高久潤】今年のノーベル経済学賞は、経済学者のアルビン・ロス米ハーバード大教授と数学者のロイド・シャプリー米カリフォルニア大学ロサンゼルス校名誉教授に贈られる。2人が確立した「マーケットデザイン」とは何か。政策研究大学院大学助教授の安田洋祐さん(ゲーム理論)に聞いた。
■経済活動生む仕組み作りに応用
 「市場や制度が最初からあって放任すればよい、という考えとは違い、適切な設計が必要だという考え方です」と安田さんは説く。
 2人は主にマッチング(組み合わせ)理論と呼ばれる領域で功績をあげた。ゲーム理論を使い、学校を選ぶ生徒と生徒を募集する学校、または臓器提供者と患者など、組み合わせによって満足や不満が生じる問題で状態を改善する方法を研究。1960年代にシャプリー氏らがつくった理論を80年代以降にロス氏が発展させ、現実に応用した。市場メカニズムが働かなかったり、うまく機能しなかったりする領域を扱える経済学だ。
 マッチング理論では、二つのグループの関係を考える。
 「例えば、男女の合コンや労働者と企業、学校と生徒など。自分がどの相手と組みたいかの順位を持つ参加者同士の組み合わせを考えます」
 シャプリー氏らは、どんな組み合わせが「よい」組み合わせなのかを評価する概念をつくった。
 「合コンの例で言うと、参加者には相手のグループのメンバーについて好みの順番がある。適当に組み合わせるとそのペアをやめて他の人とくっつき直すことが得になるケースがでてしまう。どんな参加者も、ペアを解消する理由がない組み合わせがあることを数学的に証明しました」
 こうした参加者の好みを最大限にくみつくした組み合わせを「安定マッチング」と呼び、その見つけ方もシャプリー氏らが発見した。
■合コンを例にすると…
 見つけ方はシンプルだ。安田さんによれば、男女の合コンを例に考えると、こうなる。(1)全員が好みのランキングを示す(2)男性が第1希望の女性に一斉にアタック(女性側からスタートも可)(3)女性は、アタックされた男性の中から、自分の好みに一番近い人を選んでキープ(4)拒否された男性は、次の好みにアタック(5)女性は今より好みな人が来るたびに、キープ相手を変更。「これを繰り返し、拒否される男性がいなくなるまで続けて、できるペアが安定マッチングです」
 合コンから学校選択制度、あるいは、腎臓移植のマッチングへの活用も考えられている。幅広い分野を一つの理論で扱えるのが強みだという。
 分野として確立された歴史は浅い。「10年前ならマーケットデザインを専門と言う学者はいなかったはず」。現実社会で使われる仕組みや制度として数多く導入され、近年めざましい発展を見せる。
 日本では、2004年度から始まった医師の臨床研修制度でこの理論から導かれたメカニズムが使われている。研修する病院をどこにするかという学生側と医療機関側の希望をマッチングする方法だ。
 厚生労働省によると、今年は約8千人の行き先がこの方法で決まったという。米ニューヨークなどでは、生徒の学校選択に利用される。ロス氏が制度作りにかかわった。
 「マーケットデザインが扱うのは、広い意味で経済活動を生み出す制度や仕組みです。よく考えると、実は、市場の外側でのやりとりが多いとは思いませんか。日常生活で頻繁に出会う組み合わせの問題から組織や社会の仕組みまで、制度を自らつくり出していくのが特徴です」
     ◇
〈ゲーム理論〉 相互依存関係にある意思決定を分析する数理的な手法。人間同士や企業間、国家間の駆け引きを分析するツールとして、経済学など幅広い社会科学分野で応用されている。20世紀の半ば、ハンガリー出身の数学者フォン・ノイマンらが基礎を確立し、米国の数学者ジョン・ナッシュらが発展させた。

http://digital.asahi.com/articles/TKY201210280244.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201210280244

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