出版業界の売れ線商品です。
センター試験直前!高3で作家デビューした綿矢りささんが、思い出の「受験前夜」を語ってくれました。
高3の夏、文芸賞をいただいたすぐ後に、自己推薦入試で早稲田大を受験しました。小論文と面接でしたが、準備する期間が極端に短くて、最後まで自信が持てなかったです。
■緊張のあまり、奇行に…
受験前夜、上京して母とホテルに泊まったんですが、寝られなくて。徹夜したことがなくて、「寝れへん」っていう事態が初めて。で、気がついたらお風呂場にいたんです。「ふだん布団やのに、ベッドやからあかんねや」と思ったみたい。布団への信頼心のあまり、床に寝られさえすれば、と空の浴槽に横たわるという……。緊張で完全に動揺してたんだと思います。
ほぼ殺人事件の現場です。見つけた母が「りさ、あんた何してんの!」。「寝れへんねん」「そこにいても寝れへんやろ」。母に発見された時のバカらしさは今も覚えています。そのおかげかはわかりませんが、朝には気持ちを切り替えられました。
私は短期決戦で、長い受験勉強をがんばっている人に大きなことは言えないですが、違う環境に緊張しちゃう人は、せめてふだんと同じ枕を持っていくといいと思います。
■本を読むのは好きだったのに
いわゆる受験勉強も、短いながら経験しました。小説を書き上げて賞に応募したのが高3の春。受賞できるとは思ってなかったので、その後、地元京都の大学を念頭に勉強しました。「ノルウェイの森」が大好きで、描かれている早稲田大にあこがれはありました。でも、活発なタイプじゃなかったし、親としても「京都に大学あるのに」という雰囲気で、「夢」みたいなものだったかな。
意外かもしれませんが、国語が苦手でした。要点を簡潔にまとめられず、つい細かいところまで書き込んじゃって。読むのは好きだと思っていたんですが、論文系はそうでもないと気づきました。お話系の問題は、読んでるだけで楽しいんですけど。答えは感性で選ぶんじゃなく、「ここにこういうことが書いてあるから、答えはBだ」となるじゃないですか。なので、出題者の気持ちを読む、みたいなやり方しかないんだな、と思いました。
■受験時期に小説、重なったわけは
小説を書き始めたのは、そろそろ受験勉強かーと頭に浮かび始めた高2の冬ごろ。小説書くのって、見た目は勉強と同じなので、親は最初は気づいていませんでしたね。
今やるべきことじゃないのかも……と思いながらでしたが、「勉強の前にやりたいことをしたい」という気持ちの方が強かった。私は今でも、書きかけのままになった小説がたくさんあるんですが、この時は、最後まで物語が浮かんだんです。ゴールまで行きたい、と思いました。
受験の時期に小説、というのは、たまたま重なったって感じです。小さい頃から本を読むのは好きでした。さらに、自分が「書くと楽になる」瞬間があった。読むだけだと、ずっと受動で、どんどん蓄積していく。あまりに受け手でいすぎると、ある意味不健康なのかな、と。
たとえば、学問という分野で自分独自の論文を書くとか、音楽を作るとか。人には、受け手でいるだけじゃ満足できず、レスポンスしたくなるものがあるんだと思います。
そういう衝動みたいなものは、大切なのかなと思います。高校生や大学生って、いろんなことに挑戦できる時期。もしその「レスポンスしたくなる衝動」がやってきたら、迷うかもしれませんが、大事にしてほしいと思います。(聞き手・小林恵士)
◇
わたや・りさ 京都市出身。2001年、高校在学中に「インストール」で文芸賞を受賞し、作家デビュー。04年、早大在学中の19歳で「蹴りたい背中」によって芥川賞を受賞。12年には、「かわいそうだね?」(文芸春秋)で大江健三郎賞を受賞した。29歳。
センター試験直前!高3で作家デビューした綿矢りささんが、思い出の「受験前夜」を語ってくれました。
高3の夏、文芸賞をいただいたすぐ後に、自己推薦入試で早稲田大を受験しました。小論文と面接でしたが、準備する期間が極端に短くて、最後まで自信が持てなかったです。
■緊張のあまり、奇行に…
受験前夜、上京して母とホテルに泊まったんですが、寝られなくて。徹夜したことがなくて、「寝れへん」っていう事態が初めて。で、気がついたらお風呂場にいたんです。「ふだん布団やのに、ベッドやからあかんねや」と思ったみたい。布団への信頼心のあまり、床に寝られさえすれば、と空の浴槽に横たわるという……。緊張で完全に動揺してたんだと思います。
ほぼ殺人事件の現場です。見つけた母が「りさ、あんた何してんの!」。「寝れへんねん」「そこにいても寝れへんやろ」。母に発見された時のバカらしさは今も覚えています。そのおかげかはわかりませんが、朝には気持ちを切り替えられました。
私は短期決戦で、長い受験勉強をがんばっている人に大きなことは言えないですが、違う環境に緊張しちゃう人は、せめてふだんと同じ枕を持っていくといいと思います。
■本を読むのは好きだったのに
いわゆる受験勉強も、短いながら経験しました。小説を書き上げて賞に応募したのが高3の春。受賞できるとは思ってなかったので、その後、地元京都の大学を念頭に勉強しました。「ノルウェイの森」が大好きで、描かれている早稲田大にあこがれはありました。でも、活発なタイプじゃなかったし、親としても「京都に大学あるのに」という雰囲気で、「夢」みたいなものだったかな。
意外かもしれませんが、国語が苦手でした。要点を簡潔にまとめられず、つい細かいところまで書き込んじゃって。読むのは好きだと思っていたんですが、論文系はそうでもないと気づきました。お話系の問題は、読んでるだけで楽しいんですけど。答えは感性で選ぶんじゃなく、「ここにこういうことが書いてあるから、答えはBだ」となるじゃないですか。なので、出題者の気持ちを読む、みたいなやり方しかないんだな、と思いました。
■受験時期に小説、重なったわけは
小説を書き始めたのは、そろそろ受験勉強かーと頭に浮かび始めた高2の冬ごろ。小説書くのって、見た目は勉強と同じなので、親は最初は気づいていませんでしたね。
今やるべきことじゃないのかも……と思いながらでしたが、「勉強の前にやりたいことをしたい」という気持ちの方が強かった。私は今でも、書きかけのままになった小説がたくさんあるんですが、この時は、最後まで物語が浮かんだんです。ゴールまで行きたい、と思いました。
受験の時期に小説、というのは、たまたま重なったって感じです。小さい頃から本を読むのは好きでした。さらに、自分が「書くと楽になる」瞬間があった。読むだけだと、ずっと受動で、どんどん蓄積していく。あまりに受け手でいすぎると、ある意味不健康なのかな、と。
たとえば、学問という分野で自分独自の論文を書くとか、音楽を作るとか。人には、受け手でいるだけじゃ満足できず、レスポンスしたくなるものがあるんだと思います。
そういう衝動みたいなものは、大切なのかなと思います。高校生や大学生って、いろんなことに挑戦できる時期。もしその「レスポンスしたくなる衝動」がやってきたら、迷うかもしれませんが、大事にしてほしいと思います。(聞き手・小林恵士)
◇
わたや・りさ 京都市出身。2001年、高校在学中に「インストール」で文芸賞を受賞し、作家デビュー。04年、早大在学中の19歳で「蹴りたい背中」によって芥川賞を受賞。12年には、「かわいそうだね?」(文芸春秋)で大江健三郎賞を受賞した。29歳。
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