前営業日の暴落に続き、東京株式市場は24日にも手に汗握る大幅変動を繰り返し、日経平均株価が128.47円高(0.89%高)で取引を終了した。日経平均株価は前日、5年5カ月ぶりの高水準から7.32%安となった。アベノミクスの刺激を受け、日経平均株価は半年間で約7割高になった。株式市場の異常な動きは、アベノミクスに冷水を浴びせた。雲行きの怪しい株式市場もそうだが、アベノミクスが日本にもたらす利益と損失はどちらが大きいだろうか。アベノミクスは良薬だろうか、それとも毒薬だろうか。この問題に、日本および世界が神経をとがらせている。環球時報が伝えた。
◆すでに放たれた二本の矢
アベノミクスという新名詞は、世界の各大手メディアに相次いで取り上げられている。この名詞は安倍首相が2006年に初就任した際に、中川秀直自民党元幹事長の口から出たもので、「レーガノミクス」からヒントを得ている。安倍首相の日本経済再生プランには三つの支柱があり、アベノミクスの「三本の矢」と呼ばれている(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)。安倍首相は上述した手段により、日本経済を長期的なデフレから脱却させ、名義GDP成長率3%の政策目標を実現しようとしている。
日銀の黒田東彦総裁は4月4日、就任後初の金融政策決定会合で、金融緩和政策を実施し、マネタリーベースを倍増することを決定した。これにより円安・株高が生じ、一本目の矢が順調に放たれた。安倍首相は機動的な財政政策を、元首相の麻生太郎財務相に託した。日本の有名なエコノミストの竹中平蔵氏は、「機動的」には短期間内の財政支出拡大による需給の補充、中期的に財政健全化を実現するという2つの内容が含まれると分析した。短期間内の財政支出拡大について、日本政府はこのほど10兆円の財政支出を含む経済対策を発表した。一本目と二本目の矢と比べ、三本目の経済成長戦略は難易度が高い。安倍内閣は4月に医療・育児・雇用に関する経済成長戦略第1弾を発表した。5月17日には成長戦略第2弾を発表し、企業の設備投資拡大に向け、年間投資総額の目標値を70兆円に設定した。安倍首相はさらに、6月5日に経済成長戦略第3弾を発表する見通しだ。
日本の業界関係者は、「アベノミクスはリスクの高い大胆な賭けであるが、20年間の景気低迷に陥り、さまざまな政策が顕著な効果を収めていない日本経済が試みる最後の危うい賭けであり、仕方のないことだ」としている。
アベノミクス もたらすのは禍か福か? (2)
◆円安が大企業にもたらした利益
米ニューヨーク・タイムズ紙は5月20日、アベノミクスは実施以来、確かに積極的なシグナルを発したと伝えた。例えば日本政府は、2013年第1四半期のGDP成長率が3.5%に達したと発表した。ソニーは5年ぶりに黒字転換を実現した。さらに極端な例だが、日本のビジネス街に位置する高島屋では、価値が2万ドルに達する腕時計の売れ行きが好調だ。実質、昨年11月に野田佳彦前首相が衆議院解散・総選挙を宣言した後、ドル円相場は下落を続け、1ドル=102円前後と約20円の円安が生じた。アベノミクスの効果が、たちどころに現れている。株式市場はこれを受け、全面高になっている。アナリストは、「ドル円相場が1円下落するごとに、日本の全上場企業の経常利益が1%上昇する。日本の大手自動車メーカーは、合計で約4000億円の利益を手にすることになる」と指摘した。かつて低迷を続けていた家電・電子企業、例えばソニーの株価は772円から1623円に上昇し、パナソニックの株価もほぼ倍増し、キヤノンやニコンなどの株価も約50%上昇した。電子部品および工作機械の大手、また注目されていなかった医薬品・食品メーカーの輸出額も増加している。毎日新聞の報道によると、日本三大金融グループの2013年3月までの年間営業利益は220億ドルに達し、7年ぶりに200億円を上回った。銀行業の業績回復は、企業への融資拡大を促し、実体経済の発展を支援する。
日本のある専門家は、「『安倍式の回復』は典型的な『金融駆動型成長』だ。株式市場の全面高は資産効果をもたらし、GDPの4割弱を占める日本の家庭の資産(日本の家庭の20%が株式を保有)が増加し、消費者の消費意欲が強まる。円安により企業の収益力が強化され、これが最終的に増給・配当増につながる可能性がある」と分析した。
◆日用品の価格が高騰
アベノミクスは日本に希望をもたらすと同時に、マイナスの影響ももたらしている。財務省が5月22日に発表した4月期の貿易統計速報によると、同月の貿易赤字額は1979年以来最大の8799億円に達した。急激な円安により自動車産業の輸出額が堅調に推移し、前年同期比3.8%増となったが、この増加率は輸入増により生まれた不足分の埋め合わせができない。原発稼働停止後、火力発電に必要な液化天然ガスや石油などの化石燃料の需要が急増し、価格の高騰を招いている。電気料金の引き上げも、争えぬ事実となっている。円安の影響ですでに、さまざまな日用品の価格が上昇しており、日本人の生活に影響を及ぼしている。中国社会科学院日本研究所の日本問題専門家の厖中鵬氏は、「アベノミクスは財閥にしか利益をもたらさず、日本の一般人(特に一般的なサラリーマン)は物価上昇の圧力を被る。大企業の経営業績好転は、社員の増給をもたらすとは限らない。増給がなければ、消費促進・デフレ脱却がただのスローガンになってしまう」と指摘した。
円安は、日本国内の原材料・部品輸入に依存する中小企業に、名状しがたい苦しみをもたらしている。東京都大田区は、製造業の中小企業が密集する地域だ。大田区産業振興協会の田部宗弘理事長は、「ここの中小企業は経営状況の好転を実感しておらず、多くの企業は仕事を失っている。内需型企業にとって、最も重要なのは受注だ。日本の大企業は海外進出をすでに完了しており、国内中小企業との結びつきがそれほど緊密ではなくなった」と語った。
法政大学経済学部の牧野文夫教授は、アベノミクスが直面している四つのリスクについて、次のようにまとめた。(1)本当に増給するか。円安により輸入製品の価格が上昇しており、実質的な減給が生じる可能性はないか。(2)来年4月の消費増税後、個人消費が大幅に減少する恐れはないか。(3)国債資金の株式市場への大規模流入が生じ、市場の金利が上昇し、企業の設備投資および民間の住宅投資を抑制する恐れはないか。(4)企業成長戦略は本当に軌道にのるか。
ある日本企業の役員は、「日本企業が国内に持つ工場は少なく、円安で輸出を増加させることは不可能だ」と語った。東京大学のある教授は、「アベノミクスには大きなリスクが存在し、ひとたび失敗すれば、日本は壊滅的な災いに直面するかもしれない」と述べた。英フィナンシャル・タイムズ紙は5月22日、「アベノミクスが急速に手にした成果は、安倍首相が7月に票集めをするためだけのものだ。長期的に見ると、日本経済を救うことはできない。日本経済の問題の根源は、非合理的な人口構造および投資の混乱にあるからだ。高齢化と人口減少は、経済成長の『ブレーキ』だ。また日本の製造企業はコストの割安なアジア諸国に業務を委託し、比較的少ない国内の製造業は海外の投資を引きつけられない」と分析した。(編集YF)
「人民網日本語版」2013年5月28日
◆すでに放たれた二本の矢
アベノミクスという新名詞は、世界の各大手メディアに相次いで取り上げられている。この名詞は安倍首相が2006年に初就任した際に、中川秀直自民党元幹事長の口から出たもので、「レーガノミクス」からヒントを得ている。安倍首相の日本経済再生プランには三つの支柱があり、アベノミクスの「三本の矢」と呼ばれている(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)。安倍首相は上述した手段により、日本経済を長期的なデフレから脱却させ、名義GDP成長率3%の政策目標を実現しようとしている。
日銀の黒田東彦総裁は4月4日、就任後初の金融政策決定会合で、金融緩和政策を実施し、マネタリーベースを倍増することを決定した。これにより円安・株高が生じ、一本目の矢が順調に放たれた。安倍首相は機動的な財政政策を、元首相の麻生太郎財務相に託した。日本の有名なエコノミストの竹中平蔵氏は、「機動的」には短期間内の財政支出拡大による需給の補充、中期的に財政健全化を実現するという2つの内容が含まれると分析した。短期間内の財政支出拡大について、日本政府はこのほど10兆円の財政支出を含む経済対策を発表した。一本目と二本目の矢と比べ、三本目の経済成長戦略は難易度が高い。安倍内閣は4月に医療・育児・雇用に関する経済成長戦略第1弾を発表した。5月17日には成長戦略第2弾を発表し、企業の設備投資拡大に向け、年間投資総額の目標値を70兆円に設定した。安倍首相はさらに、6月5日に経済成長戦略第3弾を発表する見通しだ。
日本の業界関係者は、「アベノミクスはリスクの高い大胆な賭けであるが、20年間の景気低迷に陥り、さまざまな政策が顕著な効果を収めていない日本経済が試みる最後の危うい賭けであり、仕方のないことだ」としている。
アベノミクス もたらすのは禍か福か? (2)
◆円安が大企業にもたらした利益
米ニューヨーク・タイムズ紙は5月20日、アベノミクスは実施以来、確かに積極的なシグナルを発したと伝えた。例えば日本政府は、2013年第1四半期のGDP成長率が3.5%に達したと発表した。ソニーは5年ぶりに黒字転換を実現した。さらに極端な例だが、日本のビジネス街に位置する高島屋では、価値が2万ドルに達する腕時計の売れ行きが好調だ。実質、昨年11月に野田佳彦前首相が衆議院解散・総選挙を宣言した後、ドル円相場は下落を続け、1ドル=102円前後と約20円の円安が生じた。アベノミクスの効果が、たちどころに現れている。株式市場はこれを受け、全面高になっている。アナリストは、「ドル円相場が1円下落するごとに、日本の全上場企業の経常利益が1%上昇する。日本の大手自動車メーカーは、合計で約4000億円の利益を手にすることになる」と指摘した。かつて低迷を続けていた家電・電子企業、例えばソニーの株価は772円から1623円に上昇し、パナソニックの株価もほぼ倍増し、キヤノンやニコンなどの株価も約50%上昇した。電子部品および工作機械の大手、また注目されていなかった医薬品・食品メーカーの輸出額も増加している。毎日新聞の報道によると、日本三大金融グループの2013年3月までの年間営業利益は220億ドルに達し、7年ぶりに200億円を上回った。銀行業の業績回復は、企業への融資拡大を促し、実体経済の発展を支援する。
日本のある専門家は、「『安倍式の回復』は典型的な『金融駆動型成長』だ。株式市場の全面高は資産効果をもたらし、GDPの4割弱を占める日本の家庭の資産(日本の家庭の20%が株式を保有)が増加し、消費者の消費意欲が強まる。円安により企業の収益力が強化され、これが最終的に増給・配当増につながる可能性がある」と分析した。
◆日用品の価格が高騰
アベノミクスは日本に希望をもたらすと同時に、マイナスの影響ももたらしている。財務省が5月22日に発表した4月期の貿易統計速報によると、同月の貿易赤字額は1979年以来最大の8799億円に達した。急激な円安により自動車産業の輸出額が堅調に推移し、前年同期比3.8%増となったが、この増加率は輸入増により生まれた不足分の埋め合わせができない。原発稼働停止後、火力発電に必要な液化天然ガスや石油などの化石燃料の需要が急増し、価格の高騰を招いている。電気料金の引き上げも、争えぬ事実となっている。円安の影響ですでに、さまざまな日用品の価格が上昇しており、日本人の生活に影響を及ぼしている。中国社会科学院日本研究所の日本問題専門家の厖中鵬氏は、「アベノミクスは財閥にしか利益をもたらさず、日本の一般人(特に一般的なサラリーマン)は物価上昇の圧力を被る。大企業の経営業績好転は、社員の増給をもたらすとは限らない。増給がなければ、消費促進・デフレ脱却がただのスローガンになってしまう」と指摘した。
円安は、日本国内の原材料・部品輸入に依存する中小企業に、名状しがたい苦しみをもたらしている。東京都大田区は、製造業の中小企業が密集する地域だ。大田区産業振興協会の田部宗弘理事長は、「ここの中小企業は経営状況の好転を実感しておらず、多くの企業は仕事を失っている。内需型企業にとって、最も重要なのは受注だ。日本の大企業は海外進出をすでに完了しており、国内中小企業との結びつきがそれほど緊密ではなくなった」と語った。
法政大学経済学部の牧野文夫教授は、アベノミクスが直面している四つのリスクについて、次のようにまとめた。(1)本当に増給するか。円安により輸入製品の価格が上昇しており、実質的な減給が生じる可能性はないか。(2)来年4月の消費増税後、個人消費が大幅に減少する恐れはないか。(3)国債資金の株式市場への大規模流入が生じ、市場の金利が上昇し、企業の設備投資および民間の住宅投資を抑制する恐れはないか。(4)企業成長戦略は本当に軌道にのるか。
ある日本企業の役員は、「日本企業が国内に持つ工場は少なく、円安で輸出を増加させることは不可能だ」と語った。東京大学のある教授は、「アベノミクスには大きなリスクが存在し、ひとたび失敗すれば、日本は壊滅的な災いに直面するかもしれない」と述べた。英フィナンシャル・タイムズ紙は5月22日、「アベノミクスが急速に手にした成果は、安倍首相が7月に票集めをするためだけのものだ。長期的に見ると、日本経済を救うことはできない。日本経済の問題の根源は、非合理的な人口構造および投資の混乱にあるからだ。高齢化と人口減少は、経済成長の『ブレーキ』だ。また日本の製造企業はコストの割安なアジア諸国に業務を委託し、比較的少ない国内の製造業は海外の投資を引きつけられない」と分析した。(編集YF)
「人民網日本語版」2013年5月28日
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