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2011年3月15日火曜日

被ばく対策@自己防衛


 今回は、地震や津波による被災に加え、原発事故による被曝への対策も問題になっている。被曝を防ぐにはどうしたらよいか、長引く避難生活での健康への影響をどう抑えるか、対処法や注意点をまとめた。

屋内退避、避難時の注意は?

 もし施設の外に放射性物質が漏れ出たら、どのようにすれば被曝を抑えられるのか。
 まず知っておきたいのは、被曝から身を守るには、〈1〉放射線を遮る〈2〉放射線源から距離をとる〈3〉被曝する時間を少なくする――の3点が重要ということだ。
 屋内退避と言われたら、放射性物質が飛散している外気が室内に入らぬよう、ドアと窓をしっかり閉める。エアコンや換気扇も切る。
 避難のため外に出る時は、放射性物質が鼻や口、皮膚の傷口などから体内に入る「内部被曝」を防ぐことを心がける。ぬれタオルで鼻や口を覆う。皮膚を露出しないような服装が望ましい。
 また、風向きにも気を配りたい。なるべく風下に入らないように注意する。

外から室内に入るときは?

 外から室内に入る際にも注意が必要だ。衣服には、放射性物質が付着している可能性がある。室内には汚染された衣服を持ち込まず、ドアの前(戸外)で脱ぎ、ただちにビニール袋に入れて口を縛る。
 放射性物質の一つであるヨウ素は、体内に入ると甲状腺に集まりやすく、特に子どもでは甲状腺がんの原因になる。ヨウ素の甲状腺への取り込みを防ぐ薬(安定ヨウ素剤)は、副作用もあるので、災害対策本部の指示に従って服用する。
 一定以上の被曝が確認された場合、通常は、衣服を脱いだり、ぬれた布でふきとったりして、放射性物質の周囲への拡散を防ぐ。  また、体内に入った放射性物質に対しては、排出を促す薬を用いる。
 

ヨウ素事前服用、排出しやすく

 福島第一原子力発電所の正門付近で13日午前8時20分ごろに記録した毎時882マイクロ・シーベルトは、短時間の被曝であれば、健康に影響が出るレベルではない。
 仮に正門付近にいて、1時間放射線を浴びたとしても、東京―ニューヨーク間を航空機で4往復した際の放射線量と同じ。一般の人が日常生活で1年間に浴びる2400マイクロ・シーベルトは、正門で3時間ほど放射線を浴びる量に相当する。
 放射線による健康影響が生じるのは、放射線が遺伝子などを傷つけてしまうためだ。被曝後、数週間以内に出る急性の症状と、数か月から数年以上たってから出る症状がある。
 2~3週間以内に出る症状は免疫力の低下や貧血、出血など。骨にある骨髄が被曝でダメージを受け、白血球や赤血球などを作る機能が損なわれるため、こうした症状が出る。免疫力が低下すると、感染症にかかりやすくなる。腸管や脳が障害を受けることもある。
 被曝後すぐに症状が出なくても、数か月から数年以上たってから、白血病や甲状腺がんなどを発症することもある。
 妊娠から間もない妊婦が放射線を多く浴びると、胎児に奇形などが生じる危険性もある。
 被曝には、体の外から被曝する「外部被曝」と、放射性物質を吸い込み、体の内側から被曝する「内部被曝」がある。内部被曝の場合、放射性物質の排出を促す薬を服用するなどの対策が必要になる。
 原発事故に備え、事前にヨウ素を服用すると、内部被曝を抑える効果が期待できる。事前に放射性のないヨウ素を取り込むと、事故で空気中に放出される放射性ヨウ素が、排尿によって体外に放出されやすくなる。
 放射線には、中性子2個と陽子2個からなる「アルファ線」、高速の電子が「ベータ線」、エネルギーが高い電磁波である「ガンマ線」など様々な種類があり、それぞれに健康影響には違いがある。
 

原発事故、「除染」できるだけ早く…放射線医

 地震に伴う原発事故で、放射線による健康被害への不安が広がっているが、愛媛県の原発の「初期被ばく医療機関」に指定されている八幡浜市立八幡浜総合病院の山本尚幸副院長(放射線科医)は「原発から一定の距離にいた住民に対しては、体表の汚染を調べて、必要な人には少しでも早く放射性物質を洗い流す『除染』を、行政が主導して行うべきだ」と指摘する。
 山本副院長によると、除染は一般的に、脱衣、シャワーでの全身洗い流しというやり方になる。ただし、放射性物質を含む廃液の管理が問題になるので、ぬれタオルで拭き取る方がよい場合もあるという。
 除染の際、誤って放射性物質をのみ込んだり、体を強くこすって傷から内部汚染を起こしたりする心配もあるため、行政などでしっかり方法や注意点を説明する必要がある。
 また、汚染のある地域の屋外に置いてあった食品を食べるのは、内部被曝の恐れもある。食品を運ぶ際も、ふたのある容器に入れた方がよい。
 その他の注意点は次の通り。
▽屋内退避と言われたら、自宅など建物の中へ入る。放射性物質が飛散している外気が室内に入らないように、ドアと窓をしっかり閉め、換気扇は使わないようにする。
▽外出の際は、鼻や口、傷口から体内に入る内部被曝に注意。ぬれタオルで鼻や口を覆う。皮膚は出さない服装で。なるべく風下に入らないように注意する。外から室内に入る際は、汚染された心配がある衣服を戸外で脱ぎ、ビニール袋に入れて口を縛る。
(2011年3月13日  読売新聞)

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