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2013年6月2日日曜日

土居 健郎

「甘え」の構造 [増補普及版] [単行本]
土居 健郎 (著)

「甘え」は日本人の日常生活にしばしば見られる感情だが、著者は外国にはそれに対応する適切な語彙がないことに気づいた。そんな自身のカルチャーショックから洞察を重ね、フロイトの精神分析、ベネディクトの『菊と刀』、サピア・ウォーフの文化言語論などを比較検討し、「甘え」理論を構築、人間心理の本質を丹念に追究した。

「甘え」は「つきはなされてしまうことを否定し、接近欲求を含み、分離する感情を別のよりよい方法で解決しようとすること」と定義される。
本書では、「甘えの世界」として日本人の精神生活に根ざした「義理人情」などを取り挙げ、その観念体系を説明、「甘えの論理」で言語と心理の不可分の関係を論じた。また「甘えの病理」では「甘え」の延長線上にある「くやしい」という感情を解説し、その病理を「甘えと現代社会」という社会現象論にまで発展させていく。

初版から30年を経て、「甘え」理論は時代背景の違いはあるにせよ、日本人の心理を解く重要な概念として、その色を失っていない。ただ、専門的解説や引用が多いのでわかりにくいかもしれない。それを考慮してか、新装版は、各章ごとの大意、人名・用語解説などを付している。「『甘え』の着想」からゆっくりと注意深く読むことで、日本人に特化した心理にとどまらず、普遍的人間心理の構造を解く「甘え」という概念を熱心に研究した著者の真剣な姿勢や研究過程の面白味が伝わってくるに違いない。(青山浩子)

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