電力網とインターネットが連動する。
スマートホーム、スマートオフィス、スマートタウンになる・・・
簡単に言えば、こういうことでしょう・・・
以前言っていた・・・
スマートマシン、スマートシステム、スマートシティ、スマートフード
村上さんは、日立だったっけ? その後、日本DECなど、外資系を渡り歩いた。
IT界の大御所3人に、急速に進歩するITはどこへ向かっているかを聞いています。最後に登場するのはグーグルの日本法人トップだった村上憲郎さんです。
「IT!おまえはどこへ」一覧
村上さんは、それまで別々とみられがちなIT革命と電力革命が実は急速に融合していて、新種の世界革命が到来しつつあると言います。京大時代、学生運動の活動家として世界革命を夢想。その後、勤務先の日立電子や日本DECで1970年以降のコンピューターの隆盛を肌身で感じ、今世紀、グーグルのIT革命に参画した村上さんの未来予想図です。さて?(聞き手・大鹿靖明)
◇
――非常に漠然とした問いですが、ITの世界はこれからどう進化していくでしょうか?
「バズワード(はやり言葉)風に言うと『スマート化』が進んでいきます。スマート化には二つの流れがあって、一つはインターネットにつながったパソコンがiモード付きの携帯電話になり、それがいまiPhone(アイフォーン)やアンドロイドというスマートフォンになり、タブレット端末という形に変化してきたという流れです。別の見方をすると、書斎やオフィスの机にあるデスクトップパソコンからインターネットに接続していたのが、スマホやタブレットからネットに接続することで、部屋への据え置きから移動できるモバイルに変わってきたと言えます。これを『モバイルインターネット』と呼びます。その究極の形がウエアラブルコンピューターだと思います。グーグルグラスや、うわさされるアップルのアイウオッチみたいにメガネや腕時計がスマート化し、スマートメガネやスマートウオッチが出現していきます。このスマート化のまだ登場していないものが、スマホがリモコンみたいになってテレビに融合するスマートテレビだろうと思っています」
「ここまでは何となくわかりますよね?」
――はい。
「スマート化の、もう一つの大きな潮流がスマートグリッドなんです。スマートグリッドというと電力のことと思われがちですが、そういうとらえ方は一面的に過ぎます。米国の第1期オバマ政権が打ち出したときの位置づけは、スマートグリッドはITの三本柱の一つでした」
■すべてがネットでつながる
「つまりスマートグリッドが実現すると電力を必要とする諸物がインターネットにつながることでもあるのです。『諸物のインターネット(Internet of Things:IOT)』と言うんですね。そのとき、人と人のコミュニケーションツールだったインターネットが、人とモノ、モノとモノのコミュニケーションツールになるんです」
――えっ、どういうことですか。スマートグリッドは電力の節約と、それによって電力会社に設備投資削減効果をもたらすという文脈で原発事故後によく語られるようになったと思いますが、それと諸物のインターネットってどう関連するのですか。電力網がインターネットになるということですか?
「そうじゃないですね。インターネットと電力網が寄り添いますが、物理的に一緒になるのではなく、論理的に束ねられます。電力網はインターネットからさまざまなヘルプ(助け)が得られ、一方、ネットも新たに電力のお手伝いをする。そういうことがシステム的にできることを言うんです」
「電力を必要とする諸物は、電力網とネットが論理的に束ねられたスマートグリッドにつながり、それによって、電気で動くものはすべてネットにつながることになる。そこで必然的にIOT、諸物のインターネットとなるんです。そうなるとすべてがスマート化する。テレビや携帯だけではなく、白物家電はスマートアプライアンス、家全体がスマートハウス、プラグ型のハイブリッド車や電気自動車など車もスマートヴィークルとなり、そういうスマートヴィークルが駐車する『タイム24』も『スマートタイム24』になる」
――スマートグリッドで電気を節約することと、インターネットでいろんなものがつながって情報が行き来することがつながると、何が起きるのでしょう?
「知りたいのは、このIOTのアプリケーション(応用物)は何かということですよね。まず最初は『消費電力の見える化』。次に『デマンドレスポンス(電力消費のピーク時に電気料金を高くするなどして電力需要を抑える仕組み)』」
――そこまではわかります。民主党政権末期に国家戦略室で議論されていました。国家戦略室の伊原智人さんたちと大阪府市エネルギー戦略会議のメンバーの村上さんたちは、東西で連携して電力改革をしようとしていたと聞いています。それでは、デマンドレスポンスの次にくるものは何でしょうか? 結局「節電」だけなのですか。
「その次は、『見守りサービス』と言われているんですね。スマートトースターが、私が毎朝こんがりトーストを2枚食べていることを把握し、TOTOの便座も『スマートTOTO』になって脱糞量や尿の成分を把握する。スマートウオッチは単なるスマホの代わりではありません。身体につけるので血圧や脈拍などのバイタルシグナルがわかります。そしてスマートヴィークルで位置情報がわかるようになります。そういった生活パターンがだいたいわかってしまう世界になります」
■見守りの次は「わからない」
「さて、それで何ができるか? たぶん独居老人が餓死しないような『見守り』ぐらいはできるでしょう。そこまでは何となく見当がつきます。しかし、その先はわからない」
――えっ? わからないんですか?
「私が講演で『わからない』というと、おじさんもおばさんも大体『なーんだ。わからないのか』、とそういう反応。私はIOTの2010年代は、インターネットの1990年代と見ているのですよ。まだウィンドウズ95も出ていなかった、ヤフーもグーグルもユーチューブもないころです。これから何が起きるのかわかっていないのかと聞かれたら、『わかっていない』と答えるしかない。わかっていたら私も即座に会社をつくっていますよ」
「でもわからない今は、大チャンスです。若い人から見ると、とんでもない可能性を秘めた時代とも言えます。マーク・ザッカーバーグ(フェイスブックの創業者)や、セルゲイ・ブリンやラリー・ペイジ(ともにグーグルの創業者)みたいになれます」
「わからないながらヒントを一つだけバズワードで言います。それは『ビッグデータ』です。いまはビッグデータ1.0の段階にあります。これがビッグデータ2.0になるのです」
(後半に続く)
◇
〈村上 憲郎(むらかみ・のりお)〉 1947年、大分県出身。京大工学部卒。日立電子、デジタルイクイップメント(DEC)などを経て2003年、グーグルの日本法人の社長として入社し、09年1月名誉会長、11年1月退任。現在は村上憲郎事務所代表、慶応大大学院特別招聘教授など。著書に『一生食べられる生き方』『村上式シンプル仕事術』など。
◇
〈スマート化〉コンピューターやインターネットなどITを使って最適化を図ることをいう。スマートには「洗練された」や「賢い」という意味がある。例えばコンピューターの力で電力需要が最小に抑えられる電力網(グリッド)をスマートグリッドと呼ぶ。
◇
村上さんのインタビューの後半は、8月20日(火)にお届けする予定です。
スマートホーム、スマートオフィス、スマートタウンになる・・・
簡単に言えば、こういうことでしょう・・・
以前言っていた・・・
スマートマシン、スマートシステム、スマートシティ、スマートフード
村上さんは、日立だったっけ? その後、日本DECなど、外資系を渡り歩いた。
IT界の大御所3人に、急速に進歩するITはどこへ向かっているかを聞いています。最後に登場するのはグーグルの日本法人トップだった村上憲郎さんです。
「IT!おまえはどこへ」一覧
村上さんは、それまで別々とみられがちなIT革命と電力革命が実は急速に融合していて、新種の世界革命が到来しつつあると言います。京大時代、学生運動の活動家として世界革命を夢想。その後、勤務先の日立電子や日本DECで1970年以降のコンピューターの隆盛を肌身で感じ、今世紀、グーグルのIT革命に参画した村上さんの未来予想図です。さて?(聞き手・大鹿靖明)
◇
――非常に漠然とした問いですが、ITの世界はこれからどう進化していくでしょうか?
「バズワード(はやり言葉)風に言うと『スマート化』が進んでいきます。スマート化には二つの流れがあって、一つはインターネットにつながったパソコンがiモード付きの携帯電話になり、それがいまiPhone(アイフォーン)やアンドロイドというスマートフォンになり、タブレット端末という形に変化してきたという流れです。別の見方をすると、書斎やオフィスの机にあるデスクトップパソコンからインターネットに接続していたのが、スマホやタブレットからネットに接続することで、部屋への据え置きから移動できるモバイルに変わってきたと言えます。これを『モバイルインターネット』と呼びます。その究極の形がウエアラブルコンピューターだと思います。グーグルグラスや、うわさされるアップルのアイウオッチみたいにメガネや腕時計がスマート化し、スマートメガネやスマートウオッチが出現していきます。このスマート化のまだ登場していないものが、スマホがリモコンみたいになってテレビに融合するスマートテレビだろうと思っています」
「ここまでは何となくわかりますよね?」
――はい。
「スマート化の、もう一つの大きな潮流がスマートグリッドなんです。スマートグリッドというと電力のことと思われがちですが、そういうとらえ方は一面的に過ぎます。米国の第1期オバマ政権が打ち出したときの位置づけは、スマートグリッドはITの三本柱の一つでした」
■すべてがネットでつながる
「つまりスマートグリッドが実現すると電力を必要とする諸物がインターネットにつながることでもあるのです。『諸物のインターネット(Internet of Things:IOT)』と言うんですね。そのとき、人と人のコミュニケーションツールだったインターネットが、人とモノ、モノとモノのコミュニケーションツールになるんです」
――えっ、どういうことですか。スマートグリッドは電力の節約と、それによって電力会社に設備投資削減効果をもたらすという文脈で原発事故後によく語られるようになったと思いますが、それと諸物のインターネットってどう関連するのですか。電力網がインターネットになるということですか?
「そうじゃないですね。インターネットと電力網が寄り添いますが、物理的に一緒になるのではなく、論理的に束ねられます。電力網はインターネットからさまざまなヘルプ(助け)が得られ、一方、ネットも新たに電力のお手伝いをする。そういうことがシステム的にできることを言うんです」
「電力を必要とする諸物は、電力網とネットが論理的に束ねられたスマートグリッドにつながり、それによって、電気で動くものはすべてネットにつながることになる。そこで必然的にIOT、諸物のインターネットとなるんです。そうなるとすべてがスマート化する。テレビや携帯だけではなく、白物家電はスマートアプライアンス、家全体がスマートハウス、プラグ型のハイブリッド車や電気自動車など車もスマートヴィークルとなり、そういうスマートヴィークルが駐車する『タイム24』も『スマートタイム24』になる」
――スマートグリッドで電気を節約することと、インターネットでいろんなものがつながって情報が行き来することがつながると、何が起きるのでしょう?
「知りたいのは、このIOTのアプリケーション(応用物)は何かということですよね。まず最初は『消費電力の見える化』。次に『デマンドレスポンス(電力消費のピーク時に電気料金を高くするなどして電力需要を抑える仕組み)』」
――そこまではわかります。民主党政権末期に国家戦略室で議論されていました。国家戦略室の伊原智人さんたちと大阪府市エネルギー戦略会議のメンバーの村上さんたちは、東西で連携して電力改革をしようとしていたと聞いています。それでは、デマンドレスポンスの次にくるものは何でしょうか? 結局「節電」だけなのですか。
「その次は、『見守りサービス』と言われているんですね。スマートトースターが、私が毎朝こんがりトーストを2枚食べていることを把握し、TOTOの便座も『スマートTOTO』になって脱糞量や尿の成分を把握する。スマートウオッチは単なるスマホの代わりではありません。身体につけるので血圧や脈拍などのバイタルシグナルがわかります。そしてスマートヴィークルで位置情報がわかるようになります。そういった生活パターンがだいたいわかってしまう世界になります」
■見守りの次は「わからない」
「さて、それで何ができるか? たぶん独居老人が餓死しないような『見守り』ぐらいはできるでしょう。そこまでは何となく見当がつきます。しかし、その先はわからない」
――えっ? わからないんですか?
「私が講演で『わからない』というと、おじさんもおばさんも大体『なーんだ。わからないのか』、とそういう反応。私はIOTの2010年代は、インターネットの1990年代と見ているのですよ。まだウィンドウズ95も出ていなかった、ヤフーもグーグルもユーチューブもないころです。これから何が起きるのかわかっていないのかと聞かれたら、『わかっていない』と答えるしかない。わかっていたら私も即座に会社をつくっていますよ」
「でもわからない今は、大チャンスです。若い人から見ると、とんでもない可能性を秘めた時代とも言えます。マーク・ザッカーバーグ(フェイスブックの創業者)や、セルゲイ・ブリンやラリー・ペイジ(ともにグーグルの創業者)みたいになれます」
「わからないながらヒントを一つだけバズワードで言います。それは『ビッグデータ』です。いまはビッグデータ1.0の段階にあります。これがビッグデータ2.0になるのです」
(後半に続く)
◇
〈村上 憲郎(むらかみ・のりお)〉 1947年、大分県出身。京大工学部卒。日立電子、デジタルイクイップメント(DEC)などを経て2003年、グーグルの日本法人の社長として入社し、09年1月名誉会長、11年1月退任。現在は村上憲郎事務所代表、慶応大大学院特別招聘教授など。著書に『一生食べられる生き方』『村上式シンプル仕事術』など。
◇
〈スマート化〉コンピューターやインターネットなどITを使って最適化を図ることをいう。スマートには「洗練された」や「賢い」という意味がある。例えばコンピューターの力で電力需要が最小に抑えられる電力網(グリッド)をスマートグリッドと呼ぶ。
◇
村上さんのインタビューの後半は、8月20日(火)にお届けする予定です。
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